音楽ライブラリーとは、TVショーや広告、映画、またはゲームなどに対し、取り扱っている楽曲を売り込み、楽曲使用(ライセンシング)をさせる会社の事です。
近年の世界において、こうしたライセンシングは音楽ライブラリーやパブリッシャー(出版社)を通じて行われることが通例となっており、個人のアーティストや作家による直接の契約が難しくなって来ています。 その背景には、ライブラリーが間に入る事により、使用する楽曲の安全性の確保や権利の問題を解決できるなど、メディア等のクライアントは安心して楽曲使用が出来るという部分が大きくあります。 つまり、音楽ライブラリーへの登録はライセンシングを得る近道とも言えます。
音楽ライブラリーとの契約には、大きく分けてExclusive/エクスクルーシブ(占有)とNon-exclusive/ノンエクスクルーシブ(非占有)の2つが存在します。 契約対象は多くの場合、曲単位となります。
ここではこの2つの契約の違いを説明したいと思います。
エクスクルーシブ(Exclusive)/占有
契約を結んだ会社のみが、ライセンシングに向け楽曲の営業が出来るというものです。
他のライブラリー、パブリッシャー、シンクエージェント社などへ、契約曲の取り扱いや営業を依頼する事は出来ません。
また、契約会社を通さずに、本人がメディアに対して直接曲のライセンシングすることも出来ません。
※通常、エクスクルーシブ契約に関して、リリースや配信、またYoutubeやSNSなどへの投稿など、いわゆるアーティスト活動への制限は契約に含まれていません。 (但し、制限については実際契約次第となりますので、契約の際は直接ライブラリーに確認をして下さい。)
ノンエクスクルーシブ(Non-exclusive)/非占有
複数のライブラリー会社に曲を預け、ライセンシングに向け営業を依頼することが可能です。
アーティスト自身が契約会社を通さず、直接メディアに対して曲のライセンシングする事も可能です。
エクスクルーシブでなければならない理由とケース
上記の2つを比べた時、より自由度の高いノンエクスクルーシブの契約の方が有利なのではないかと感じる人も少なくないと思います。
しかしながら、我々ライセンサーはより多くのライセンシングの機会を増やす為、エクスクルーシブの契約を推し進めています。
1. Netflixを始め、各放送局が行っているブランケット契約に楽曲を入れる事が出来る。
ブランケット契約とは、放送局が年間に定まった金額をライブラリー会社に支払うことで、提供されたカタログ(ブランケット)の中から、必要な際に必要な数だけ自由に楽曲の使用が出来るという契約です。
このブランケットに入ることのできる楽曲は、基本的にエクスクルーシブ契約された曲のみが対象となります。
この理由を知るには、放送局側からの視点が大事になります。
例えば、ある放送局がライブラリー会社Aとノンエクスクルーシブのブランケット契約を結んだとします。 ノンエクスクルーシブの為、ブランケット契約に入ってまったとしたら…。 放送局としては、既にブランケットで支払いをしている曲にも関わらず、同じ曲をB社からの提供でライセンシング契約、つまり支払いをしている事になります。 こういった事例は双方にとってトラブルの元となりますので、そういった事を避ける為、エクスクルーシブ契約のみが対象となっている理由となります。
2. 世界各国の国毎のサブパブリッシャーと契約をする事が出来る。
国毎または地区毎で、ライセンシングに強いサブパブリッシャーが存在します。
例えば、日本のTVショーに数多くライセンシングをしている大手ライブラリー会社も、アフリカのTVショーに曲のライセンシングをすることは非常に難しいものです。
そこで、ライブラリー会社は楽曲が、より多く使用される機会を求め、アメリカならばA社、ヨーロッパはB社、アフリカはC社といったように、エリアを定めて地区毎のサブパブリッシャーと契約、提携しているケースが多いのです。
通常、このサブパブリッシャーはエクスクルーシブの契約しか受け付けていません。 つまり、そのエリアの営業は、契約を結んだ1社のサブパブリッシャーに任せる必要があります。 (もし、曲が複数のライブラリーで扱われている場合、サブパブリッシャーとの契約は難しくなってしまいます。)
3. 他のライブラリーとのバッティングを無くす事により、曲のバリューをキープ出来る。 ライブラリー会社にとって、他のライブラリーにない楽曲は貴重です。 例えば、広告案件において、クライアントに5曲のみのピッチングや提案が許された様な状況下の中では、ライブラリーはエクスクルーシブの曲を優先的に提示していきます。
エリア毎によるエクスクルーシブ契約について
上記で挙げた様に、各エリア毎でサブパブリッシャーと契約を交わすことは、ライセンシングを得る機会を増やすこととなります。
しかしながら、例えば、日本国内での営業やライセンシングが上手くいっていて、海外のみのライセンシング機会をもっと増やしたい場合の考え方についてはどうでしょうか?
この場合、エリア毎にエクスクルーシブの契約する事が、最も現実的で効果的と思われます。
つまり、日本国内での営業以外は契約会社に任せてしまうという方法です。
根本的に、エリア毎に営業活動を行うという概念がライセンシングビジネスの中にありますので、この契約はいたって円滑に進める事が可能です。
契約期間について
業界のスタンダードは、2年~5年。 NetflixやNBCなどのブロードキャストのブランケットディールにも、数年単位での契約が基準とされます。
まとめ
ライセンシング機会を増やす為、ライブラリーとの契約や、それに伴う契約内容は非常に重要なものです。 それと同様に、楽曲数を増やし、狙っているマーケットの需要を理解する事、音質やオリジナリティの向上に努めることも、作家として重要な要素だと言えるでしょう。 日本国内の作家さんの作品が、さらにもっと世界中のメディアで使用される日、世界中のオーディエンスに聴かれる日を夢見て、私達は日々ライセンシングに向けた活動を行っております。
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